不労所得で生活するために 配当金の魅力とリスク
株で儲けて、不労所得で生活を送る。
みなさんなんとなくイメージはできるかもしれませんが、具体的にはどうやればいいのかというと、なかなか答え辛いかとも思います。
そもそも株で成功すると、なぜ働かないで済むのか?
そこのところを少しお話ししようと思います。
まず、株式には『議決権』というものがあり、株式の所有者はすなわち、その企業の所有者となります。
極端な話、トヨタ自動車の株の50%を所有すれば会社の社長を好きに選ぶことすら可能です。
これについては以前、以下のようにお話ししました。
しかし、株式の持つ価値はこの『議決権』だけではありません。
そう、それが『配当権』です。
配当とは、企業が事業で儲けたお金を株主に分配する制度のことです。
そもそも、企業の所有者が株主である以上、企業の儲けとは所有者の儲けでもあります。その儲けを、現金という形で分配するのです。
なので、例えばあなたがトヨタ自動車の株を所有している投資家ならばトヨタが毎年、儲けの一部をあなたに送金してくるわけです。
考えてみてください。
あの天下のトヨタの社員たちが汗水たらして稼いだお金を、あなたは家でゴロゴロしているだけで(もちろん働いててもいいですが)勝手に持ってきてくれるのです。
これを不労所得と言わずになんといいましょうか。
ちなみに、2018年のトヨタの年間配当金は1株当たり220円でした。
たった220円? いいえ、違います。
株は予算さえあるならば、1人でたくさん買うことができます。
もし100株所有していれば年間220円×100株で2万2千円手に入ります。
1万株所有していれば、年間220万円。
5万株所有していれば、年間1100万円にもなるのです。
ただ寝てるだけで、毎年これだけの現金があなたの口座に振り込まれるのです(税金はとられますけどね)。
まさに遊んで暮らせる人生です。
しかし、当たり前ですがそう簡単な話ではありません。
そもそも、トヨタ株は2019年6月現在、1株の価格が6600円します。
5万株を所有するために必要な資金は、実に3億3000万円にもなります。
いっきに現実に引き戻される金額、世の中そんなに甘くはないということですね。
しかし、そこで諦めないでください。
考えてみてください、100株を手に入れる資金は66万円です。
けして安い買い物ではありませんが、買うことが不可能な金額ではありません。
100株所有していれば、毎年2万2千円ほどが入ってきます。
10年で22万円、30年で66万円です。
株は証券取引所で売れば現金化することができるので、仮に30年間株価が変化せず、配当金も減らずに配分が続いていれば、理論上は30年ほどで資産が倍に増えるのです。
定期預金では30年満期というものがあったとしても絶対にこんなに増えません。
もちろん、リスクは数え切れないほどあります。
トヨタがこの先、絶対に潰れないという保証はありません。
トヨタが潰れれば株は紙切れ同然になります。
仮に30年間配当金が同額支払い続けられたとしても、30年後に突然トヨタが倒産してしまった場合、66万円も出して買った100株が紙切れになってしまいます。
これではせっかくもらった配当金も丸々消し飛んでしまいます。
そうでなくとも業績が悪化すれば株価は下がりますので、潰れないにしても全体の利益は減ってしまいます。
さらに減配のリスクもあります。
配当金は、あくまでも企業が儲かったから分配するものです。
トヨタが業績悪化のために配当金を減らしたり、時には配当を出さないこともあるでしょう。これを株式用語では『減配』『無配』といいます。
配当金がなくなったうえに倒産してしまっては、目も当てられない大損になってしまいます。
このように、株式には常にリスクが伴います。
株は安全だとか、絶対儲かるとか、トヨタ自動車は潰れないとか、そういうことをいう人は信用しない方が良いです。
株の世界に絶対はありません。つねにリスクのことは考えてください。
しかし、だからこそ言います。リスクは自分の負える範囲で負えばいいのです。
全ての財産が100万円しかないのならば、100株で66万円もするトヨタの株は買わない方が良いでしょう。
そもそも企業なんて星の数ほどあります。もっと安い株だっていくらでもあります。
例えば100株で1万5千円ほどの『みずほフィナンシャル』を買うという手もあります。この程度であれば企業が潰れて紙切れになったとしても、致命傷にはならないでしょう。配当金も年間に750円ほど貰えます。
こうやって少しずつリスクをとりながら、資産を増やす努力をしていくのが、健全な投資スタイルだと思います。
不労所得で生活する、それは確かに理想的ですが、いきなり株の配当金だけでそんな生活を送ることは難しいでしょう。
自分に見合ったリスクをとり、株を所有して配当金を受け取り、時間とともに資産を増やしていく。これが長期投資における基本的な資産運用スタイルです。
この長期運用スタイルを、例えば以下のような事例で考えてみましょう。
あなたは22歳フリーターで、いま時給1000円のバイトをしているとしましょう。
あなたはすでに何年か働いて貯めた貯金を投資に廻し、100株のトヨタ自動車株を所有しているとします。
そうなると年間2万2千円の配当があり、これはバイト22時間分の給料に相当します。
つまり1日8時間働く場合、3日分よりちょっと少ない程度の現金が年に一度、自動的に入ってくることになります(税金のことは一端除外することとします)。
あなたが頑張って給料から毎月2万5千円の貯金をすると、2年で60万円が貯まります。
さらにさきほどの配当金が2年分、つまり4万4千円ほど貰えます。
これだけあれば、トヨタの株をもう100株買い増すことができます。
そのパターンを繰り返すこと20年、42歳になったあなたはトヨタ株を1000株保有しています。仕事は相変わらず時給1000円のバイトです。
そのころには、毎年の配当金がバイト27日分ほど入ってくることになります。
つまり約一か月分の給料が自動的に入ってくる計算になります。
そうなると、例えばこんな風に考えることができます。
1 一か月間の休暇をとり、その間が無給だったとしても年間の収入は減らない。
2 逆に休まず働けば、毎年1回、1か月分のボーナスが入ってくる。
こう考えれば、ずいぶんと心に余裕が生まれてくる感じがします。
そして、さらにもう一つ重要な要素である『複利効果』が存在します。
トヨタ株を1000株所有していれば、毎年22万円が入ってきます。
つまりこの頃になると、給料からの毎月2万5千円の貯金と合わせて、2年間で104万円が貯まる計算になるのです。
そうなると、2年ごとの100株買い増しを行っても、まだ38万円が余る計算になります。
時間とともに増える額が二次関数的にアップしていく、これこそが配当における最大の力『複利効果』です。
働いて貯金をする、これはとても大切な精神だと思います。
しかし、給料がたくさん貰え、収入が毎年アップし、老後年金も充実している。
みんながそんな生活を送ることは、いまの時代むずかしいでしょう。
そうなったら、多くの人は資産運用をするしかありません。
株で儲ける。
それを考えるとき、この配当金というシステムは非常に重要になります。
次回は、この配当金の仕組みについて、もう少し詳しく語っていくことにします。