株を始める資金はいくらくらい? 資産のバランス配分に気を付けよう
現実的な話として、何円あれば株の運用ができるのでしょうか?
テレビや雑誌などで『5万円から始める株式投資!』とか『1万円以下で買えるお宝株!』など、いろいろ刺激的な記事を見かけます。
私の感覚としては、さすがに5万円は厳しいと思います。
出来れば100万円欲しいところですが、50万円ならなんとかなるとは思います。
それも難しい場合安定した運用は難しいですが、20万円あれば最低限の投資はできます。さすがにそれ以下は厳しいです。
では、その根拠をご説明します。
5万円で買える優良株はたしかにありますが、10万、20万、30万、40万と、いろいろな価格帯に優良な株は存在します。
似たような企業が複数ある場合に、予算の問題で優良な企業を選ぶことができないというのはできれば避けたいものです。
5万円以下、というしばりをもうけてしまうと、その時点で多くの企業を削らざるを得ません。
5万円以下の優良企業はもちろん買いつつ、それ以上の価格の企業も常に選択肢に入れておくことが望ましいのです。
それなら優良株を一つ買えばいいのかというと、なかなかそうもいきません。
株の基本的な考え方として『余剰資金』と『ポートフォリオ』というものがあります。
余剰資金はそのままの意味で、予備の資金です。
ポートフォリオは、資産全体のバランスという意味合いです。
株価はその企業の業績だけでなく、様々な要因で上げ下げします。
ニュースを見ていても、トランプ大統領のツイッター投稿1つで株式市場が大混乱に陥ることもしょっちゅうです。
もしあなたが全資金で1つの企業の株を買っていて、もう余剰資金が残っていなかったとします。その場合、なんらかの外部的な要因(トランプ発言など)で株式市場全体の価格が下落した時に、せっかく別の優秀な株を安く買う機会が来たにもかかわらず、予算不足で買うことができません。
株で儲ける大原則は『安いときに買って、高いときに売る』です。
その企業とは関係なく株価が下がったのならば、絶好の買い時です。
これを見逃すのは大損です。
株価はどうしても予想不可能な動きをすることがあります。
下がったと思って買ったらさらに下がったり、上がったと思って売ったらさらに上がることなどしょっちゅうです。
そのため予想外の動きをしたときに、それに対応して売買をするための資金は一定程度残しておくことが望ましいのです。
もし5万円の株を買うのなら、同じくらいの別の株を買うことができる資産を残しておく方が柔軟な投資を行うことができます。場合によっては、すでに持っている株が値下がりした時に、さらに買い増すという選択肢もあります。これを『ナンピン』といいます。
また、企業の種類を複数に分けておくことも重要です。これがポートフォリオです。
ポートフォリオの考え方の分かりやすい例えとしてよく用いられるのが『同じカゴに卵を乗せるな』という格言です。
ひとつのカゴに卵をいくつも乗せていると、もしそのカゴをひっくり返したとき、すべての卵が割れてしまいます。
つまり、一つの株や同じような業種にばかり資金を投入していると、なにか起きた時に全てを失う可能性があるということです。その企業が不正をしていたり、その業界を巻き込む大事件が起きた時などです。
そのため、安定した資産運用をする場合は複数の企業、または複数の業界などにバランスよく資産を分散することが望ましいとされています。
では、具体的にポートフォリオを考えると、どのような感じになるか?
例えば、日本株への投資だけで考えてみるならば、まず内需系と外需系に分けます。
内需とは、日本国内の人を相手にする産業です。
例えば小売業、飲食業、娯楽産業などです。電化製品販売の『ヤマダ電機』は5万円、ファミリーレストランの『すかいらーく』は19万円、東京ドーム球場や遊園地などを運営する『東京ドーム』は10万円で買えます。
この3社を買うと、34万円になります。
これら内需系はあまり為替相場の影響を受けないので、安定性が高いです。
逆に外需とは海外への販売などを中心とする企業で、自動車、半導体などです。
自動車・バイクなどで知られる『本田技研工業』ならば28万円、半導体大手の『SUMCO』なら13万円ほどで買えます。
この2社を買うと、41万円になります。
こちらは円安で業績が伸びやすく、逆に円高になると露骨に売り上げが落ちます。
海外の政治状況、為替などに大きな影響を受け、株価の動きが激しい傾向にあります。
上記の内需・外需系5社で75万円。これに買い足し用の現金を25万円程残しておいて相場変動に備えます。
こうすれば、100万円でのバランスがとれた資産構成になります。
もしどれか1社で不祥事が起きたり、急激な為替変動があったとしてもダメージは分散されます。
資金が100万円もなく50万円しかない場合、これらと同業の株価の低い企業で同じようなバランスをとればポートフォリオは安定します。
このように複数の業界にバラバラに投資をしておけば、なにか大きな出来事があっても大損する可能性が減ります。
無論、大儲けのチャンスも減ることにはなりますので、自信があるのなら100万円を全部『本田技研工業』に投入するというのもアリです。
円安が進み、業績が伸びれば大儲けできます。
しかし、逆のパターンになれば大損になります。
そこは投資スタイルの問題ですので、個人の好みの問題になりますが、筆者としては安定した儲けを出そうと思ったら、どうしてもポートフォリオは気を付けるべきと思います。
ただし、バランスをとろうと思って資産配分をしても、内需・外需などの企業分けが、現代社会においては難しいという問題があります。
日本人もホンダの車を買いますから、そういう意味では内需です。
しかし、いまだに海外販売比率の方が多いので、どちらかといえば外需です。
円安になれば売り上げは上がりますが、現在は国内製造せずに海外で現地生産することも多くなっており、そういう意味では為替変動の影響が以前より減りました。
しかし、そうは言っても円安の方が円換算した場合の売り上げが伸びるのです。
このように、考えるれば考えるほど、企業の性質については混乱をきたします。
グローバリズムが進んだ現代社会において、企業はあらゆる事態を想定して保険をかけてきました。そのため、かつて為替相場に大きな影響を受けていた自動車産業も、円高時に損をし過ぎないように、為替に対する予防措置をとっています。
そのため、ある企業を『円安有利』とか『内需系』などときっぱり分けるのが難しいのです。
同じことは小売業でも言えます。昔は日本人しか客がいませんでしたが、いまは観光に来た外国人の爆買いなどもありますので、小売りも外需の比率が上がっています。
しかし、全体の売り上げで言えばまだ国内向けの方が多いので内需的といえます。
こういった点は、一つ一つの企業を見て、自身の所有する資産全体の中でバランスをとっていくしかありません。
しかし、大原則としては円安、円高などの影響を考慮して、バランスをとった資産構成を心掛けることが大切です。
資金を増やしていく場合は、株だけでなく不動産や債券などを組み入れていくこともあります。
さらには、海外資産に投資をすることもあります。
優良な投資先に、バランスよく資産を配分していく。
これがすべての基本です。